銀(シルバー)」というマテリアルはその発見以降、何千年にもわたって世界中のあらゆる地域・民族から装身具の材料として使われてきました。

では、人々はなぜ銀という素材にこだわったのでしょうか?

装身具史研究家の露木宏氏は著書『神々の宿る銀(2013)』にてその理由を以下の5つに分類し定義しました。

1:自己を美しく装うため
2:邪を払い、招福を願って
3:信仰・宗教の証として
4:財産(動産)として
5;民族のアイデンティティーさらには民族の誇りとして

当サイトでもこの分類にならい、上記5分類にならった「シルバージュエリー着用の理由」について考察。

第2回では、銀が魔除け・厄除けとされてきた理由や事例についてご紹介いたします。

シリーズ第1回はこちらから

■銀という素材の特性

世界中で銀が「魔除け」として重用されてきた大きな理由は、銀がもつその殺菌・抗菌作用にあると言えるでしょう。

その効能をもたらすのは正確には銀(Ag)ではなく銀イオン(Ag +)ではあるものの、例えば銀食器に食べ物・水分・唾液などが触れると表面から微量の銀イオンが溶け出し細菌の増殖を抑える効果を持っています。

また、ヨーロッパや中国では貴族の毒殺対策として銀食器が多く使われていたことをご存知の方も多いはず。

かつて暗殺用の毒として多用されたヒ素化合物が銀食器に触れると黒く変色する(実際にはヒ素ではなくヒ素精錬時の不純物として混入した硫黄に反応していた)逸話などから、「銀」というマテリアルそのものに悪いものを退ける力を見出した人が世界中にいたのです。

吸血鬼や狼男といった魔物への対抗手段として「銀の弾丸」が構想されたのもこうした理由からだと言えるでしょう。

■銀そのものを魔除けとする人々

こうした、銀そのものを魔除けとする考え方を元に銀のアクセサリーを身につける人々がいます。

トゥアレグ・シルバーで有名なサハラ砂漠のトゥアレグ族は、を預言者ムハンマドの「恵みの金属」、逆には不運をもたらす「悪魔の金属」とし、魔除けとして銀で作られた装身具を身につけました。

ムハンマド自身が銀の指輪を着用していたという聖伝(ハディース)に基づき、サハラの厳しい環境において、災いから身を守り、幸運をもたらす金属として重宝されました。

■銀の形や付属品に魔除けの効能を見出す人々

シルバージュエリーに魔除けの願いを込める人々の中には、銀そのものが魔除け…というより、銀製のアクセサリーの形や付随品に魔除けの効能を見出す人々も少なくありません。

銀の指輪や首飾りにつけられたトルコ石が魔除けであったり、銀のアクセサリーへの型取りや彫り込み、紋様(たとえば「蛇」「ファティマの手」「錠前」など)を魔除けのシンボルとするケースも世界中でみられます。

いずれにせよ、銀がもつ特性や(金と比べた)入手のしやすさは、今ほど医療・インフラが発達していなかった時代において人々を安心させるお守りだったと言えるでしょう。