銀(シルバー)」というマテリアルはその発見以降、何千年にもわたって世界中のあらゆる地域・民族から装身具の材料として使われてきました。

では、人々はなぜ銀という素材にこだわったのでしょうか?

装身具史研究家の露木宏氏は著書『神々の宿る銀(2013)』にてその理由を以下の5つに分類し定義しました。

1:自己を美しく装うため
2:邪を払い、招福を願って
3:信仰・宗教の証として
4:財産(動産)として
5;民族のアイデンティティーさらには民族の誇りとして

当サイトでもこの分類にならい、上記5分類にならった「シルバージュエリー着用の理由」について考察。

第3回では、銀が世界中様々な宗教において広く使われてきた理由や事例についてご紹介いたします。

シリーズ第2回はこちらから

■信仰心の篤い人は宗教の一部を身につける

銀(シルバー)を宗教的な理由で身につける事例は、世界中のさまざまな文化・宗教で見られます。

そもそも宗教を熱心に信仰する人は、日頃からその宗教のシンボル、例えば十字架のネックレスやロザリオ、タスビー、ダビデの星のネックレスなどなど…

そして、「銀」はその抗菌作用や輝きの美しさから、こうした宗教的アイテムを構築する素材として重用されたと言えるでしょう。

■キリスト教

銀の十字架を筆頭に教会の聖杯やロザリオなど、銀を宗教儀式の道具やアクセサリーとして使用するケースが多数あります。

■イスラム教

イスラム教では男性が金を身につけることを「虚飾」として避ける習慣があり、その代替として銀が主要な金属として広く用いられています。

日々身につけるアクセサリーとしても預言者ムハンマドが銀の指輪を着用していたという聖伝(ハディース)に基づき銀は「恵みの金属」とされ、前回の記事にてご紹介した「ファティマの手」や、コーランの一節を書いた紙片を収めることのできる銀のペンダントといったアイテムが存在します。

■ヒンドゥー教

ヒンドゥー教の結婚式で花嫁が身に着けるアンクレット(パヤル/Payal)は銀製が多く、歩くたびに鈴が鳴り、音色で悪いエネルギーを祓い(魔除け)家族を守る意味があるとされています。

また、トゥリング(足の指輪)も銀製が多く、既婚女性の印として新婦が第2指に身に着けるケースが多数あります。

このように、銀は様々な宗教で儀式用具や普段から持ち歩く信仰の証の素材として使用されてきました。

この要因には銀の抗菌作用から連想される破魔のイメージはもちろんのこと、銀がその美しさとは裏腹に「適度に高価ではあるが、庶民が手にできないほどではない」程度の価格価値であったからではないでしょうか。