指輪はつける指や左右によって異なる意味が込められており、古くから願いを込めたお守りや、他者が一目で分かるステータスの表明として使われてきました。

しかし、ネットを検索すると出てくるのは根拠もなく「右手中指の指輪は、自己表現やクリエイティブな活動を促進するとも言われています」といったような適当な内容を書いた記事ばかり。

そこで今回は、古代ローマや中世ヨーロッパにおいて実際に考えられていた、つける指ごとの意味やその変遷についてご紹介します。

■親指(the thumb):

※リチャード3世

古代ローマの大プリニウスによる『博物誌(Naturalis Historia)』によれば、婚約指輪以外の指輪は、親指にはめると幸運を呼ぶと記されています。

また、実用的な弓兵の親指保護具が地位の象徴に転化したとの解釈も古典期にあり、権力・威厳・区別の象徴として支配者が親指に指輪を装着することが多いとされました。

その後もヨーロッパの王侯貴族の肖像画にたびたび親指リングは登場しますが、他の指にもリングがはめられた上で親指にも着用している...というケースがほとんどです。

■人差し指 (the index finger):

「人差し」指、そして英語のindex(指標)の意味どおり、指示や何かを指し示す際に用いるのが人差し指。

ゆえに指揮者のシンボルである人差し指に指輪をはめると性格が活発化するとされ、王侯の多くは人差し指に権力の象徴として指輪を着用しました。

プリニウスは後期ローマになってから「神々の像でも人差し指に指輪が見られるようになった」と記しています。

また、ルネサンス期まで婚約・結婚指輪でも人差し指にはめる習慣があり、現在でもユダヤ教では新婦の右手人差し指が結婚リングを嵌める指となっています。

■中指 (the middle finger):

よくある「指ごとの指輪をつける場所の意味」を書いたネット記事などでは中指につけた指輪をバランスや協調性の象徴などと表現していますが、『指輪の文化史(浜本隆志)』によればヨーロッパでは一六世紀頃まで中指に指輪をつけるのは「馬鹿」とみなされるという俗説がありました。

この俗説の起源については確たる原点が不明なものの、プリニウスによるローマ時代の習慣の記述において、指輪の着用が薬指にはじまり、最終的には「すべての指に(中指を除いて)着けるようになった」 と書いていることから、ローマ人にとって中指は指輪の着用をしない唯一の指という共通認識が広まったのではないでしょうか。

※中指への指輪着用を避けるアン・オブ・クレーヴスの肖像

なお、プリニウスは博物誌(Naturalis Historia)』第33巻において「ガリア諸州(Gallic Provinces)とブリタニア諸島(British Islands)は中指に着けていた」と記しており、当時のガリア(現在のフランス周辺)やブリタニア諸島(現在のイギリス)の習慣はローマのそれとは異なっていたことが伺えます。

なお、中国では20世紀以降の西洋式指輪文化が中国に取り入れられた際に、中国独自の指の象徴論や風水と結びついて生まれた現代的な俗説・習慣として、中指に婚約指輪を、結婚指輪は薬指にといった使い分けが見られます。

■薬指 (the ring finger):

結婚指輪をはめる指として世界的に知られる薬指。

5世紀ローマの著述家マクロビウスが『サトゥルナリアVII』にてエジプト起源の信仰として「左手の薬指は心臓から静脈で直接繋がっている」とする俗説を紹介。

これを16-17世紀にかけて活躍したイギリスの教会法学者ヘンリー・スウィンバーンが『vena amoris(愛の静脈)』として結婚に関する著作『A Treatise of Espousal or Matrimonial Contracts』で紹介し、現在まで続く結婚指輪=左手薬指の常識が定着しました。

なお、それ以前の古代ローマではプリニウスによると指輪当初「小指の隣の指(薬指)だけに1つだけ着ける」と記しており、薬指が指輪文化の最初期から使用されてきた指であることが伺えます。

ゆえに英語では薬指をそのまま「Ring finger」と称しますが、日本語での「薬指」という言葉は薬師如来の指、紅を塗る指とされたことに起因します。

また、ヨーロッパでは薬指を「digitus medicus(医療の指 ラテン語)」や「Arztfinger(医者の指 古いドイツ語)」と呼称していたケースも多く、東西問わず薬指を医療に結びつけていた様子が伺えます。

■小指 (the little finger):

小指に指輪をつける習慣は後期ローマにおいて一般的になり始め「複数の指輪を小指に集中させることで富や所有物の象徴とした」とプリニウスは記しています。

中世ヨーロッパにおいても小指にはシグネットリング(印章指輪)と呼ばれる家紋やイニシャルを彫り込んだ指輪を小指に着用するように。

※エドワード2世

このシグネットリングは現代におけるハンコやスタンプの役割を果たすもので、14世紀のイングランドの国王エドワード2世が全ての公式文書に国王のシグネットリングで署名すること定めるなど、上流階級にとっての実用品としての意味合いも持ちました。

その後、シグネットリングは次第に「実用」から地位や身分を示す「顕示」へと変化し、皮肉にも後期ローマ時代に使われた「富の象徴」的な意味合いに近い役割へと逆戻りしたと言えるでしょう。

シグネットリング以外にも現在では小指用リングとしてピンキーリングが人気。

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■さいごに

今回の記事では指輪を着用する指の意味や歴史についてご紹介いたしました。

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