
【伝統工芸インタビュー】元経済産業省高官が分析する「顧客」の見つけ方 ~ものづくりに財布を開く人を増やすための哲学とは~
経済産業省の官僚として地域と産業を巡ってきた岸本吉生氏。職人の手しごとを発信するECサイトCRAFT-TALES.comのしゅーによる伝統工芸産業についてインタビューをしました。「商人」「職人」「顧客」「場所」の視点から課題解決のヒントを探ります。
第3回では「顧客」に目を向け、買い手の開拓と持っておくべき考え方をうかがいます。

しゅー:美しいものを生活道具に使うことを教養だと考え、職人にお金を出して支える旦那衆がいた時代がありました。
岸本吉生:旦那衆には「良い仕事をしている人に仕事をあげる」という考えがありました。奈良の東大寺や伊勢の遷宮(せんぐう)は今もその役割を果たしています。一流の職人に仕事が出されています。良い仕事にお金を出すのはお客の大切な役割です。旦那衆が職人の仕事や芸能に十分なお金を支払うのは、伝統を次世代につなぎたいと願うからです。そういうマインドを持った人がお客様と伝統工芸の産地がつながるといいですね。富裕層にそうした姿勢が広がるといいですね。
しゅー:伝統工芸を支えたいと思う買い手ですね。
岸本吉生:はい。
しゅー:富裕層以外の買い手はどのように見つければよいでしょうか?

岸本吉生:「どんな時に使ってほしいか」「どんな人に使ってほしいか」を発信して意見を聞いてみるするのはどうでしょうか。CRAFT TALESで販売している中国の伝統工芸品は、例えばですが、インド人に使ってもらえるしょうか。こういう価値観で使ってもらえるとハッピーというCRAFT TALESの哲学に合うお客様はどのような方でしょうか。輪島塗でも播州織でも同じです。誰が作っているのか、年間何点作れるのかも大切な情報です。お客様お一人お一人を大切にしていることが伝わります。Instagramは良いチャネルだと感じています。
しゅー:このAirPodsケース、とても1,000個は作れません。
岸本吉生:仕事が多すぎて職人が疲れるのは避けなければなりません。繰り返し同じことをするのは苦痛を伴います。職人さんの時給を上げて仕事量は適度にしたいですね。同じ年収でも1,000個作るよりも100個、あるいは10個作る方がいいですよね。限定生産にして何個作るか顧客に知らせておくのはいい考えだと思います。ユニクロの生産方式は模範ですね。
しゅー:第1回、第2回のインタビューでは受注生産を強く主張されていました。
岸本吉生:機械やコンピュータを用いた生産であれば同じものを大量生産しても問題ありません。むしろ望ましいのかもしれません。工芸はどうでしょうか。しゅーさんのAirPodsケースであれば、製作済みの製品の値段を高めに設定するのはどうですか。すぐに手に入るからです。デザインや大きさなどカスタマイズを希望する場合は作業する間お待ちいただく。今ほしいのであれば制作済みの中から選んでいただく。そんな売り方はいかがでしょうか。

しゅー:ファッション業界では制作から販売までのスピードがどんどん上がっています。お客様は待ってくれるのでしょうか?
岸本吉生:美味しい鰻はお店に入ってから小一時間待つものです。コンビニなら即時です。家を建てるのは一年以上かかります。中古なら即日です。新車は半年待ちます。中古車は即売です。どちらもありです。CRAFT TALESは「待ってもいい」とおっしゃるお客様をあてにするのはいかがですか。
しゅー:ありがとうございます。次回は工芸品に出会う「場所」の視点からお話を伺います。





