経済産業省の官僚として地域と産業を巡ってきた岸本吉生氏。職人の手しごとを発信するECサイトCRAFT-TALES.comのしゅーによる伝統工芸産業についてインタビューをしました。「商人」「職人」「顧客」「場所」の視点から課題解決のヒントを探ります。

第4回では「場所」に目を向け、お客様に商品を見てもらえる場所、手にとってもらえる場所をどう作るかをお聞きしました。

第1回対談

第2回対談

第3回対談

岸本吉生:輪島塗や播州織の経験から、お客様に商品の現物を見てもらう難しさがわかりました。

しゅー:場所がないということでしょうか?

岸本吉生:街を歩きお店をのぞいているうちに、買いたくなった経験はありませんか。ウインドゥ・ショッピングです。銀座や渋谷、かつての大きな商店街とはそのような場所でした。ホテルや旅館のロビーは良いと思います。ホテルニューオータニに行くと、良い店があってつい入ります。数百万円の毛皮商品を展示するお店があります。その店はそこと帝国ホだけにあります。よく売れています。ホテルや旅館に佇むときは気持ちにゆとりがあります。ちょっとお店を覗いてみようとなります。駅近のショッピングモールは通りがかる人の数は多いでしょうが、次の予定があれば工芸品に目は向かないでしょう。

しゅー:岸本さんが今日着ていらっしゃる播州織の衣料品は、肌触りや着心地を確かめるという点で実店舗が必須ですね。

岸本吉生:いま開発中の亜麻の衣料品は、まずお客様に着ていただきたいのです。ホテルや旅館、福祉施設の館内着にするのがいいかもしれないと思っています。着ていたら、肌がよろこんで肌がほしがる、という経験をしていたただきたいのです。うっとりする。この商品を買いたい。そういう経験を買う前にしていただけるといいですね。

※播州織の亜麻布衣料品ブランド「amatowa」

しゅー:例えば音楽の街ニューオリンズでは、ミュージックパブはどの店も出入り自由です。外からお酒を持ち込むことも自由です。でもお客さんは高いお酒を店内で注文します。

岸本吉生:どうしてそうなるのでしょうね。

しゅー:お客さんは気分が良い方を選んでいます。

岸本吉生:何回も行きたくなるお店なのでしょうね。そんなお店があると幸せですね。

しゅー:最後にCRAFT TALESのサイトについてアドバイスを頂戴できますか?

岸本吉生:良いサイトだと思います。

しゅー:ありがとうございます。まずはミャオ族のシルバージュエリーです。将来は世界中の職人の手しごとを集めたサイトにしたいと思っています。

岸本吉生:お客様に買いたいと思ってもらう工夫や、買った後の価値の提供についてどう考えておられますか。

しゅー:工芸を身近に感じてもらうのがテーマです。日々持ち歩くものや日常使いのものであれば、使いながら職人の手しごとに思いを馳せることができます。そんな製品を集めたストアにしたいと思っています。

岸本吉生:手に取ってみたいと感じてもらえるメッセージ、共感できるコンテンツをInstagramで発信するのはいかがでしょうか。サイトを拝見すると、共感する前にいきなり売り場に誘導されてしまう印象があります。

しゅー:工芸品や職人の歴史や文化を解説する際は、どのように書くのが良いでしょうか。

岸本吉生:美意識に訴えることが大切だと思います。歴史を物語として紐解くこともいいでしょう。キーワードを際立たせる方法もありますし、文脈の中に位置づけて深く感じていただく方法もあります。他社のブランドと自社のブランドはひとつにつながっています。他の産地は自分たちの産地とひとつにつながっています。人類は4万年前から船に乗って世界中を旅しています。衣食住、産地を問わず、手仕事という普遍の視点からアプローチできると思っています。

しゅー:大切なアドバイスをいただきました。ありがとうございました。